2020年6月21日2 分

迫り来る音は敵かも!?

「迫り来る音」とバイアスの話

「迫り来る音」は敵の接近の可能性を示す
健康でない人は「迫り来る音」の距離を少なく見積もる

五感(味覚・嗅覚・触覚・視覚・聴覚)は環境との相互作用で進化や退化していきます。

例えば、聴覚は環境について多くの情報を教えてくれます。

祖先の環境では、「迫り来る音」は敵の接近を知らせる可能性があります。

すると、ヒトは「迫り来る音」に対してバイアス(認知の歪み)を示すようになりました。

どういうことかと言うと、ヒトは「迫り来る音」を聞くと、対象がより近くにいると判断します。

そうすることによって、敵から逃げる時間を多く取ることができます。


敵(迫り来る音)→10秒後に到着と予想(実際に10秒後に到着)→逃げる時間があまり無い

敵(迫り来る音)→3秒後に到着と予想(実際は10秒後に到着)→すぐに逃げ始められる


敵が同じように10秒後に到着する場合でも、到着する時間が短いと予想することで早く逃げることに繋がります。

さらに、ある研究では健康さと「迫り来る音」に対するバイアスの強さを調べました。

すると、健康でない人ほど「迫り来る音」がより近くにあると判断しました。

つまり、健康でない人はより早く敵から逃げる為の行動を取らないといけないので、このバイアスが強く出るというわけです。

自然界では「迫り来る音」に対してより敏感に反応できるバイアスを持った個体が生き残ってきたし、健康的でない個体はバイアスが健康的な個体より強く出ることで逃げる時間を稼ぎ、生き残っってきたというわけです。

そう考えると、バイアスは単なる認知の歪みというよりは祖先の環境において適応的だった可能性があるということです。

参考文献:

Neuhoff, J. G., Long, K. L., & Worthington, R. C. (2012). Strength and physical fitness predict the perception of looming sounds. Evolution and Human Behavior, 33(4), 318-322. doi:10.1016/j.evolhumbehav.2011.11.001