迫り来る音と遠ざかる音の違い
迫り来る音と遠ざかる音の性差を検討した2009年の研究
女性の方が迫り来る音をより近くに感じるが、遠ざかる音の感じ方には性差が見られない
迫り来る脅威に早期に対処する為に、近づいてくる音はより近くに感じるという進化的な仮説を補強
「迫り来る音をより近くに感じる」という研究は以前にも何度かご紹介していますが、覚えているでしょうか?
まず、ヒトには迫り来る音を近く感じるという傾向があり、それを進化心理学者は「事前の準備行動を促進する必要性の為」と主張しています。
しかし、進化的な重要性ではなく、音の知覚をする上で単にそのような傾向があるだけの可能性もあります。
そんな疑問に答える為、迫り来る音と遠ざかる音の性差を検討した2009年の研究を見てみましょう。
この研究によれば、女性の方が迫り来る音を近く感じるが、遠ざかる音の感じ方には性差が見られないことがわかりました。
ここで重要なのは、進化的にヒトが近づく音を事前の準備行動を促進させる必要性から近く感じるのであれば、男性よりも女性の方がその必要性が高い(身体的に男性よりか弱いので)ので性差が見られるだろうという予測を行い、また遠ざかる音は迫り来る音よりも危険を知らせないので、遠ざかる音には性差が見られないだろうと予測し、検証しているところです。
近づいてくる音と遠ざかる音が同じように聞こえないことは、音の知覚に関する単純な性差が存在するのではなく、進化的な重要性に基づいて性差が形成されてきた可能性を示唆させるわけです。
参考文献:
Neuhoff, J. G., Planisek, R., & Seifritz, E. (2009). Adaptive sex differences in auditory motion perception: looming sounds are special. Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performance, 35(1), 225.
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