食性と味覚嫌悪学習
昆虫食コウモリと果実食コウモリでは味覚嫌悪学習が容易に成立するが、ナミチスイコウモリでは味覚嫌悪学習が成立しない
血液だけを摂取するナミチスイコウモリには毒回避として適応的な味覚嫌悪学習が不要な為、この行動特性は進化の過程で失われたということ
食べ物の好き嫌いはなぜ起きる?では味覚嫌悪条件づけについてご紹介しました。
実はこの味覚嫌悪条件づけは雑食動物のジレンマで紹介した雑食動物のジレンマと関連があります。
つまり、雑食動物はなんでも食べるからこそ、毒に出会った時にそれを避けなければいけないわけです。
そこで出てくるのが味覚嫌悪条件づけです。
味覚嫌悪条件づけは「ある食べ物を摂取して体調を崩すと、その食べ物を避けるようになる」ということを意味します。
2003年の研究から、昆虫食コウモリと果実食コウモリでは味覚嫌悪学習が容易に成立するが、ナミチスイコウモリでは味覚嫌悪学習が成立しないことがわかりました。
これは、血液だけを摂取するナミチスイコウモリには毒回避として適応的な味覚嫌悪学習が不要な為、この行動特性は進化の過程で失われたということです。
同じコウモリでも、さまざまな昆虫を食べるコウモリやさまざまな果実を食べるコウモリは毒を摂取した時の為に味覚嫌悪条件づけという行動特性が残るが、血しか吸わないナミチスイコウモリはその必要がないので、味覚嫌悪条件づけという行動特性が消えてしまうという自然選択の合理性がわかる興味深い研究でした。
進化の歴史の中で私たち雑食動物はジレンマを抱えながら、毒に対抗する手段として味覚嫌悪条件づけを手に入れたのです。
参考文献:
Ratcliffe, J. M., Fenton, M. B., & Galef Jr, B. G. (2003). An exception to the rule: common vampire bats do not learn taste aversions. Animal Behaviour, 65(2), 385-389.
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