生まれる前から始まる争い
母親は胎児に問題があれば流産しようとする
胎児はホルモンを分泌し母親の流産を阻止しようとする
流産はとても悲しいもので、流産を経験した母親は責任を感じることも多いでしょう。
しかし、進化心理学的には流産とは母親 vs. 胎児の争いにおいて母親が勝利を収めたにすぎないのです。
受精卵の実に78%は着床に失敗するか妊娠初期に自然流産してしまいます。
その理由は胎児の染色体異常や母体の栄養が足りないことなどです。
ここで大事になる考え方は、母親は胎児に染色体異常があったり、自身の栄養が足りていなかったりすると積極的に流産を行おうとするということです。
つまり、母親はより健康な胎児を完璧な体制で育てたいわけです。
しかし、胎児にとっては自分の代わりに次の子どもを育てることなど考えられません。
なぜなら、胎児にとってはこれが最初で最後のチャンスだからです。
そこで、胎児はhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンを放出することにより母親が流産するのを防ごうとします。
母親と胎児が争うのは「母親は健康な子どもを産みたい」「胎児はどんなことがあっても自分が生まれたい」というお互いの目的が異なるからでしょう。
参考文献:
Jarvis G. E. (2016). Early embryo mortality in natural human reproduction: What the data say.F1000Research,5, 2765. https://doi.org/10.12688/f1000research.8937.2
Haig, D. (1993). Genetic Conflicts in Human Pregnancy.The Quarterly Review of Biology,68(4), 495–532. doi: 10.1086/418300