武器の登場と集団内の力関係
武器の使用は弱者と強者を同じ土俵に立たせる
「ヒトの進化の歴史において、武器(石器)の登場は集団内の平等主義を達成するのに役立った」
このような主張を聞くと矛盾しているように聞こえませんか?
確かに、銃撃事件や戦争では武器が大いに活躍し、多くの人の命を奪うので、武器と平等は相反するように感じます。
しかし、集団間の力関係に着目すると武器の新たな一面が見れそうです。
武器が登場する前には力関係こそが全てになります。
つまり、力の強いものは弱いものより圧倒的に生存や繁殖において有利になるということです。
しかし、武器が登場すると話は変わります。
武器の使用は力の弱いものが強いものを倒せる可能性を大幅に高めます。
つまり、以前のような強者と弱者の力関係はそこまで絶対的では無くなるのです。
さらに、武器が使えることはより大勢の力無き弱者が強者に立ち向かうことを可能にします。
武器が登場する前には強者と戦う際には2、3人程度が同時に襲える程度です。
なぜなら、攻撃の際には必ず対象に近づかなければなりませんが、数個体が近づくとそれ以外の個体は邪魔でしかありません。
さらに、攻撃する個体は必ず反撃を受けてしまいまうので、攻撃する個体とそれを見守る別の個体で戦うコストが大きく異なります。
これでは、強者と戦おうと思っても、実際に攻撃する個体が不利ということになります。
しかし、武器(投擲武器など)があれば、多くの弱者が強者を離れたところから襲うことも可能であり、弱者が強者と戦うコストを大幅に減少させます。
つまり、武器が登場するとヒトは肉体的な強さだけでは集団内で上手くやっていくことができず(弱者が力を合わせて強者を倒すことが可能だから)、騙し・騙されというような政治が重要になってきたのでしょう。
参考文献:
Bingham, P. M. (2000). Human evolution and human history: A complete theory. Evolutionary Anthropology: Issues, News, and Reviews, 9(6), 248-257. doi:10.1002/1520-6505(2000)9:63.0.co;2-x
Boehm, C. (1993). Egalitarian behavior and reverse dominance hierarchy.Current Anthropology, 34(3), 227–254.https://doi.org/10.1086/204166