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なぜホストにお金をつぎ込む女性がいるのか?

MCFCモデルとMMCモデル


性差に関する2つのモデルをまとめた2013年の研究
オスはできるだけ多くの交尾相手を求めて競争し、メスは競争するオスの中から相手を選ぶというMCFCモデル(males-compete/females-choose)
両性とも交尾相手については選り好みし、望ましい交尾相手については競争するというMMCモデル(mutual mate choice)

人間の性差をどう捉えるべきなのでしょうか?


大事なことですが、進化心理学の分野で男性と女性、オスとメスについて語られる時、その背景にあるのは様々な種や異なる文化を比較・検討した時に両性がどのような振る舞いをしているのか、その振る舞いを進化的なアプローチではどう解釈できるかということであり、「男はこうあるべきだ」とか「女はこうあるべきだ」というような信念の話ではありません。


今回は、性差に関する2つのモデルをまとめた2013年の研究から、進化心理学の分野で人間の性差がどう捉えられてきたのか、そして今後はどう捉えるべきかについて考えてみましょう。


まずは、2つのモデルを見てみましょう。


オスはできるだけ多くの交尾相手を求めて競争し、メスは競争するオスの中から相手を選ぶというMCFCモデル(males-compete/females-choose)と両性とも交尾相手については選り好みし、望ましい交尾相手については競争するというMMCモデル(mutual mate choice)です。


この論文では、MCFCモデルは多くの種には当てはまるが、ヒトにはMMCモデルを適用すべきではないかと主張しています。


なぜこのような結論に至ったのでしょうか?


まず、進化心理学の分野では性差の代表として扱われるクジャクについて考えてみましょう。


クジャクのオスはメスを惹きつける為に立派な羽を持っています。


立派な羽を持っているほど、メスが選んでくれるというわけです。


このような例は非常に多くあるので、進化心理学の分野では男性が競い合い、女性に選んでもらうという考え方が一般的です。


しかし、Stewart-Williams and Thomas (2013)は実際には女性同士が競い合い、男性に選んでもらうということもヒトでは頻繁に行われていると主張しています。


もちろん、全ての進化心理学者がMCFCモデルを支持してきたわけでもありませんが、少なくともこの論文は伝統的なMCFCモデルが進化心理学において性差の姿を歪めていると主張しています(実際、クジャクはオスが派手ですが、ヒトでは女性の方が派手というように性差は逆転していると述べています)。


MMCモデルを採用する場合、解釈が容易になることもあります。


たとえば、ホストにハマり多額のお金を注ぎ込む女性や男性アイドルを追っかける女性のような存在です。


これらは、MCFCモデルを絶対正しいと考えていると、なかなか解釈することは難しいですが、男性も女性も相互に配偶者選択を行うと考えるのであれば、魅力的な男性に対して女性が積極的にアプローチすることも十分考えられるわけです。


どうでもいいことですが、この論文は「The ape that thought it was a peacock: Does evolutionary psychology exaggerate human sex differences?」というタイトルなのですが、「孔雀だと思った猿」なんて、良い言い回し(皮肉)だと思いました。


さらにどうでもいいことですが、英語だとオスとメスを区別しない場合、クジャクはpeafowl、オスの場合はpeacock、メスの場合はpeahenと言います(peacockが雌雄の区別なく用いられることもあります)。


参考文献:


Stewart-Williams, S., & Thomas, A. G. (2013). The ape that thought it was a peacock: Does evolutionary psychology exaggerate human sex differences?. Psychological Inquiry, 24(3), 137-168.

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