どのように巣穴の大きさを推定するのか
巣穴となる岩の割れ目の面積を測るのに、アリは「ビュフォンの針」を利用する
フェロモンを出しながら不規則に一定時間走り回って、その場を離れる。戻ってきて、また不規則に移動し、以前の道に遭遇する頻度で空洞の大きさを推定する
「ビュフォンの針」という言葉を聞いたことはありますか?
もしこの記事を読んでいるあなたが学生時代に数学が得意なら、すぐにビュフォンの針が何かわかると思います。
今回は、(数学的な部分には全く触れませんが)アリとビュフォンの針の関係について考えてみましょう。
ある種のアリ(Leptothorax albipennis)は岩の割れ目に生息しているので、巣穴の候補地を選定する際に、割れ目の広さを推定しなければなりません。
もちろん、アリが高度な数学の計算を用いているとは考えづらいので、アリは別の方法で巣穴の広さを推定している思われます。
実は、アリは「ビュフォンの針」を利用することにより、巣穴となる岩の割れ目の面積を測っていることがわかっています。
「ビュフォンの針」を使えば、長さが既知のランダムに散らばった2本の線の交点の頻度から、平面の面積を推定できます。
これはどういうことかと言うと、まず初めにアリはフェロモンを出しながら不規則に一定時間走り回ります。
一旦その場を離れた後、再度戻ってきて、また不規則に移動し、以前の道に遭遇する頻度で空洞の大きさをアリは推定するということです。
もし、「ビュフォンの針」の話を知らなければ、アリがぐるぐると岩の割れ目を彷徨っているのを見た時に、「アリは帰り道もわからなくなったんだ」と勘違いしてしまいそうですが、アリは私たち人間でも難しい自分の身長よりも遥かに大きい面積の推定を単純な方法で行なっているのです。
参考文献:
Mugford, S. T., Mallon, E. B., & Franks, N. R. (2001). The accuracy of Buffon's needle: a rule of thumb used by ants to estimate area. Behavioral Ecology, 12(6), 655-658.
Gigerenzer, G., & Brighton, H. (2009). Homo heuristicus: Why biased minds make better inferences. Topics in cognitive science, 1(1), 107-143.