集団サイズと警戒と食物
集団サイズの増加は捕食者の検出力を低下させることなく、個人が食物を探す時間を確保することを可能とする
集団サイズの増加は個人が手に入れられない食物の場所に関する情報を手に入れることを可能にする
世界の総人口は70億人をとうに超え、増加の一途を辿っています。
このような状況は人類史の中でも初めての経験なわけですが、私たちの祖先がサバンナなどで生活していた時代から変わらないことは、集団で生活していたということです。
集団で生活するメリットは多くありますが、今回は食物に焦点を当てて考えてみましょう。
サバンナのような自然環境で私たちが肩を寄せ合う理由はなんでしょうか?
自然界では食物を探すという行為は危険な行為でもあります。
なぜなら、食物に注目するということは捕食者への注意を犠牲にしなければならないからです。
つまり、採餌と捕食者の警戒はトレード・オフの関係なのです。
しかし、集団で暮らしていれば、この問題は容易に解決されます。
集団サイズが増加するにつれて、捕食者を警戒する「眼」は多くなるので、個々人は多くの時間を採餌に割けるわけです。
例えば100人の集団では、交代制で数人が見張っているだけで、残り大勢は採餌にだけ集中することが可能になります。
さらに、多くの個体が食物を探すということは、それだけ食物がある場所の情報も増えることになるので、個人では到底探しきれないような量の食物に関する情報が集団には溢れることになります(それだけ食物が豊富であれば)。
そう考えると、集団で生活するということは敵から身を守ることもでき、食物を探す時間も増え、食物に関する情報も共有できるというメリットだらけの戦略と考えることが出来ます。
参考文献:
Lima, S. L. (1995). Back to the basics of anti-predatory vigilance: The group-size effect. Animal Behaviour, 49(1), 11–20. https://doi.org/10.1016/0003-3472(95)80149-9
Kurland, J., & Beckerman, S. (1985). Optimal Foraging and Hominid Evolution: Labor and Reciprocity. American Anthropologist,87(1), new series, 73-93. Retrieved October 16, 2020, from http://www.jstor.org/stable/677663
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