どうにもならない状況と子育ての関係
飢饉や戦争は親の投資の減少と関連あり
子育てが死亡率を改善しないような状況では親は子育てをしない
戦後などの貧しかった時代の話を高齢者の方から聞くと、当時は口減らしの為に子どもの時から自立しなければいけなかったということが結構あったことを耳にすることがあります。
今だとなかなか考えられないのですが、進化的にはどうでしょうか?
実は、親の投資つまり子育ては外因性の死亡率と関係があるということが言われています。
外因性の死因とは例えば捕食者に食べられたり、事故で死んでしまったりということです。
反対に、内因性の死亡とは病気などで死んでしまうことを指します。
考え方としては、外因性の死亡率はどうしようもありませんが、内因性の死亡率は積極的に看病をしたり、投資量を増やしたりすることによって改善可能です。
ある研究では、飢饉や戦争は親の投資の減少と関連があるということが主張されています。
つまり、親の投資(子育て)が子どもの死亡率を改善できないような状況では親は子育てをやめてしまうのです。
この話を聞いて薄情だ!とか母親の母性はどこに行ったんだ!とか言いたい方もいると思いますが、生きていくためには当たり前のことです。
なぜなら、親は有限の資源しかもっていないので、限られた時間や食料などを有効に使います。
積極的に子どもを育てても、戦争などで死んでしまう可能性が高ければ、親は生き延びて、安全な状況になったらまた子を産み育てたほうが良いと考えるようになるのです。
外因性の死亡率が高い状況と低い状況で子育ての戦略を変えてきたからこそ、私たちの祖先は生き延びてこれたというわけです。
参考文献:
Quinlan R. J. (2007). Human parental effort and environmental risk. Proceedings. Biological sciences, 274(1606), 121–125. https://doi.org/10.1098/rspb.2006.3690
Ellis, B.J., Figueredo, A.J., Brumbach, B.H. et al. Fundamental Dimensions of Environmental Risk. Hum Nat20, 204–268 (2009). https://doi.org/10.1007/s12110-009-9063-7