ジェンダー不平等と人生満足度、仕事満足度
主観的幸福感の全体的な尺度(人生満足度)と領域的な尺度(仕事満足度)に性差があるのか調べた2018年のメタ分析
106ヵ国にわたる人生満足度に対する281の効果量(合計1,001,802人)と仕事満足度に対する264の効果量(合計341,949人)を分析
全体的には、人生満足度にも仕事満足度にも有意な性差は確認されなかった
ジェンダー不平等が高まるにつれて、女性の仕事満足度は男性よりも低下したが、人生満足度には差が見られなかった
男性と女性の人生はどちらの方が幸せなのでしょうか?
もちろん、男性の人生を女性が経験することはできませんし、女性の人生を男性が経験することはできませんが、それでも男女の主観的幸福感を比較することはできます。
一つ一つの研究結果を見ることも大事ですが、多くの研究が集まると、さまざまな結果が集まることになります。
ある研究では、効果が出たけど、別の研究では効果が出ないというようなことはよくあるわけです。
そんな時には、効果量をまとめて比較するメタ分析という手法が重宝されます。
今回は、主観的幸福感の全体的な尺度(人生満足度)と領域的な尺度(仕事満足度)に性差があるのか調べた2018年のメタ分析を見てみましょう。
この研究では、106ヵ国にわたる人生満足度に対する281の効果量(合計1,001,802人)と仕事満足度に対する264の効果量(合計341,949人)を分析しました。
全体的には、人生満足度にも仕事満足度にも有意な性差は確認されなかったという結果が得られました。
そもそも、この結果だけで非常に興味深いのではないでしょうか?
男女は(生物学的にも文化的にも)置かれている状況が(多かれ少なかれ)異なるにもかかわらず、男女は人生においても仕事においても同程度に幸福だったわけです。
しかし、この結果は全体的な効果を比較しているだけです。
もしかするとジェンダー不平等が高い国では一方の性別の主観的幸福感が低いことも考えられます。
そこで、ジェンダー不平等の影響を見てみると、ジェンダー不平等が高まるにつれて、女性の仕事満足度は男性よりも低下したが、人生満足度には差が見られなかったことがわかりました。
領域別に見ると、ジェンダー不平等の影響が(わずかに)見られても、全体的な主観的幸福感にはジェンダー不平等の影響が(ほとんど)見られない。これはもしかすると、男女の総合的な幸せを考える時に「男女平等」を重視することがそこまで大きな影響をもたらさないことを示唆しているのかもしれません。
参考文献:
Batz-Barbarich, C., Tay, L., Kuykendall, L., & Cheung, H. K. (2018). A meta-analysis of gender differences in subjective well-being: Estimating effect sizes and associations with gender inequality. Psychological science, 29(9), 1491-1503.
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