医学的な検査と自己欺瞞
試験紙を唾液で濡らし、病気になりやすいかどうか判定するという実験
「試験紙の色が変わらなければ病気になりやすい」と説明された参加者は「試験紙の色が変わらなければ健康」と説明された参加者よりも試験紙の色が変わるのを長く待ち、検査の精度を低く見積もった
子どもの時には健康診断と言えば、身長や体重に関するものであったり、聴力検査をするくらいのものでしたが、大人になると、健康診断ではそれこそ体中調べられることも多くなります。
ここで質問ですが、皆さんは健康診断の結果をどう解釈しますか?
「書いてある通りに信用しますか?」
それとも、「様々な理由をつけて検査結果を正面から受け止めませんか?」
1992年に行われた実験は、ヒトが医学的な検査結果にどのように反応するのか?という疑問に関して興味深い知見を提供しています。
この実験では、試験紙を唾液で濡らし、病気になりやすいかどうか判定するということが行われました。
すると、「試験紙の色が変わらなければ病気になりやすい」と説明された参加者は「試験紙の色が変わらなければ健康」と説明された参加者よりも色が変わるのを長く待ち、検査の精度を低く見積もったのです。
つまり、「試験紙の色が変わらなければ健康」と説明された参加者は検査結果に満足している為、早々に結果の判断をし、結果自体に満足いっているので、検査の精度を疑うことはありませんでした。
しかし、「試験紙の色が変わらなければ病気になりやすい」と説明された参加者はどうにか色が変わってほしいので、試験紙の色が変わるのをより長く待ち、あまつさえ満足のいかない検査結果を検査自体の低い精度のせいにしたということです。
自分にとって望ましい検査結果を得ようとし、判断方法に差が出たり、結果の解釈が一貫していなければ、医学的な検査をする意味はだいぶ無くなるでしょう。
次回、健康診断をする際には、どんな結果でも一貫した態度で受け入れてみてはどうでしょうか?
参考文献:
Ditto, P. H., & Lopez, D. F. (1992). Motivated skepticism: Use of differential decision criteria for preferred and nonpreferred conclusions. Journal of Personality and Social Psychology, 63(4), 568–584. https://doi.org/10.1037/0022-3514.63.4.568