感情認識に関する2つの仮説
全ての感情認識において女性が優位なのか優位性は負の感情に限定されるのか調べた研究
女性は正と負の両方の感情を認識することが速く、性差は負の感情で大きい
女性の優位性は育児経験や単純な知覚速度の性差に由来するものではなかった
女性の方が男性よりも育児において優れた能力を発揮することは多くの人が直感的に納得すると思います。
今回は他者(大人)の感情を認識する際の性差について考えてみましょう。
全ての感情の認識において女性が優位なのか優位性は負の感情に限定されるのか調べた2006年の研究によれば、女性は正と負の両方の感情を認識することが速く、性差は負の感情で大きいことがわかりました。
また、これらの効果は育児経験や単純な知覚速度の性差に由来するものではなかったことも同時にわかっています。
つまり、女性が他者の顔から感情を素早く読み取ることができるということは子育てにとって有利な能力である為に女性の方が男性よりも優れている可能性があるわけです。
ただし、この研究では成人の顔画像が刺激として用いられているという点には注意が必要です。
本当に女性の感情表現の認識の優位性が子育てに関連するものであれば、成人の顔認識においても性差が見られるということはある意味で矛盾しています(もちろん、感情表現の認識の優位性が複数の相互排他的でない要因によって進化した可能性もあります)。
この研究だけでは結論はもちろん出ませんが、少なくとも子育てに関する2つの仮説(女性は全ての感情表現の認識において男性よりも優れている、女性が感情表現の認識において優れているのは負の感情のみである)のどちらも併せて確かめられたという点は非常に興味深いでしょう。
参考文献:
Hampson, E., van Anders, S. M., & Mullin, L. I. (2006). A female advantage in the recognition of emotional facial expressions: Test of an evolutionary hypothesis. Evolution and Human Behavior, 27(6), 401-416.