2023年12月19日4 分

交際相手の選択肢が多いと…どうする?

スピード・デートと交際相手の決定方法

交際相手の選択肢の数が交際の意思決定にどのような影響を与えるのか調べた2010年の研究
1,868人の女性と1,870人の男性が84回の(3分間の)スピードデートを通して下した意思決定(YESかNOか)を分析
スピードデートは15人から23人のパートナーが提示されたものを「小規模」、24人から31人のパートナーが提示されたものを「大規模」として分類
マルチレベル分析の結果、小規模のスピードデートでは参加者の意思決定は時間をかけて引き出し評価される特徴(職業上の地位や学歴など)に重きが置かれており、大規模のスピードデートでは素早く簡単に評価できる特徴(身長や体重など)に重きが置かれていた
選択に費やす時間は交際相手の選択においてコストになり、豊富な選択肢に直面した時、選択者はヒューリスティックな選択戦略をとることを示唆

私たちは交際相手を選ぶ時、どのような基準に基づいて選んでいるのでしょうか?

ある人は見た目を気にするかもしれませんし、別の人は職業で選ぶかもしれません。

今回は、スピードデートという出会いの方法を分析した2010年の研究を見てみましょう。

この研究では、交際相手の選択肢の数が交際の意思決定に影響するのではないかと考えられました。

もっと言い方を変えると、選択肢(潜在的な交際相手)の数が多いか少ないかでは、個人の選択の方法が変化するのではないかということです(間違ってはいけないのが、今回の研究ではスピードデートが用いられていて、選択肢の数が多いというのはその個人がモテるかどうかということではありません)。

1,868人の女性と1,870人の男性が84回のスピードデートを通して下した意思決定(YESかNOか)が分析されました(ちなみに、今回のスピードデートでは複数人の男性と複数人の女性が3分間のミニデートを繰り返すというもので、参加者はオンラインプロフィールを作成していました)。

そして、今回の分析で重要な変数となる、交際相手の選択肢の数はスピードデートの規模が指標となりました。

15人から23人のパートナーが提示されたものを「小規模」、24人から31人のパートナーが提示されたものを「大規模」として分類されました。

今回の研究では(入れ子構造なので)マルチレベル分析が使われました。

分析の結果、小規模のスピードデートでは参加者の意思決定は時間をかけて引き出し評価される特徴(職業上の地位や学歴など)に重きが置かれており、大規模のスピードデートでは素早く簡単に評価できる特徴(身長や体重など)に重きが置かれていたことがわかりました。

これは、選択に費やす時間は交際相手の選択においてコストになるという先行研究と一致し、豊富な選択肢に直面した時、選択者はヒューリスティックな選択戦略をとることを示唆しています。

つまり、出会う人数によって人々が相手の何に注目するかは変わるわけです。

少し振り返ってみると、今回の研究には(少なくとも)以下のような要素が組み合わさっていました。

  1. スピードデート

  2. 小規模か大規模

  3. 参加者の決定(YESかNOか)

  4. 参加者の特徴(身長や体重、職業上の地位や学歴など)

  5. 分析方法(マルチレベル)

心理学の研究を眺める時に(もちろん、進化心理学も)重要なのは、1つの研究は限られた範囲内でしか研究を行えないということです。

例えば、今回の研究がスピードデートではなく、マッチングアプリだったらどうでしょうか?参加者の決定がYESかNOかではなく、一人だけを選ぶ方法だったら?さらに別の分析方法を用いていたら?

結論は大きく変わってしまうかもしれません。

しかし、結論が変わってしまうということは別に問題ではありません(それよりも調査や実験が行われなければ、仮説の検証もできませんし、その方が科学にとっては問題です)。

過去の論文や分析データが残っていれば、さまざまな研究と比較し、レビューをすることもメタ分析をすることもできます。

Lenton and Francesconi, (2010)は非常に短い論文(6ページ)ですので、暇な時にでも読んでみましょう。

参考文献:

Lenton, A. P., & Francesconi, M. (2010). How humans cognitively manage an abundance of mate options. Psychological Science21(4), 528-533.

Sullivan, M. S. (1994). Mate choice as an information gathering process under time constraint: implications for behaviour and signal design. Animal Behaviour47(1), 141-151.