党派性バイアスと2つの仮説
党派性バイアス(支持する政治グループや自身の信条に一致する情報をより有利に評価する傾向)の強さが保守派とリベラル派で異なるのか調べた2019年のメタ分析
38の論文から集められた51件の研究結果(合計18,815人)を分析
Asymmetry hypothesis(保守派はリベラル派よりも党派性バイアスが強いと予測)
Symmetry hypothesis(保守派もリベラル派も党派性バイアスの強さは同等と予測)
全体的な党派性バイアスは頑健だったが(r = .245)、リベラル派(r = .235)と保守派(r = .255)の党派性バイアスの強さに違いが見られなかったことから、Symmetry hypothesisを支持
政治は私たちの生活にも密接に関連してきますので、一般の人でも、異なる政治グループを支持していれば、時には言い合いが激化することもあります。
リベラル派が保守派と意見が大きく異なる時、「時代遅れだ」とか「勉強不足だ」と言っている場面を見たことはないでしょうか?
さて、今回は保守派は本当に勉強不足で意見が偏っているのかについて考えてみましょう。
心理学の分野では人は多くの認知バイアスを持つことを明らかにしてきましたが、例えばバイアスについて考えてみると、保守派はリベラル派に比べてバイアスが強いのでしょうか?
支持する政治グループが異なる人々の間に見られるバイアスとしては、党派性バイアス(Partisan Bias)がよく知られています。
党派性バイアスとは、支持する政治グループや自身の信条に一致する情報をより有利に評価する傾向のことです。
党派性バイアスには大きく、Asymmetry hypothesis(保守派はリベラル派よりも党派性バイアスが強いと予測)とSymmetry hypothesis(保守派もリベラル派も党派性バイアスの強さは同等と予測)という2つの異なる仮説が存在します。
Asymmetry hypothesisがまさに「保守派は不勉強で意見が偏っている」ということに関連する仮説です。
ちなみに、リベラル派が保守派よりも党派性バイアスが強いことももちろん考えられますが、この観点はあまり検討されていません。
2019年のメタ分析では、38の論文から集められた51件の研究結果(合計18,815人)を分析することにより、どちらの仮説が支持されるか検討しています。
その結果、全体的な党派性バイアスは頑健だったが(r = .245)、リベラル派(r = .235)と保守派(r = .255)の党派性バイアスの強さに違いが見られなかったことから、Symmetry hypothesisを支持する結果となりました。
この研究結果は、特定の政治グループの意見が偏っているというよりは私たちがどのような意見を好みどのような意見を好まないのかについて、政治グループの支持を超えて共通のバイアスがかかっているということを明らかにしている研究です。
参考文献:
Ditto, P. H., Liu, B. S., Clark, C. J., Wojcik, S. P., Chen, E. E., Grady, R. H., ... & Zinger, J. F. (2019). At least bias is bipartisan: A meta-analytic comparison of partisan bias in liberals and conservatives. Perspectives on Psychological Science, 14(2), 273-291.