Dissociative Self-Preference Model(解離性自己選好モデル)
意識的にはヒトは自分より大事な人(親友やパートナーなど)を好む
無意識的にはヒトは大事な人より自分を好む
他人を優先するというシグナルを出す人が好まれるが、実際に優先する人は適応的でないということ
「大事な人を1人頭に思い浮かべてください。彼氏や彼女でもいいですし、奥さんや旦那さんでも結構です。もちろん、親友や家族でも構いません。今頭に思い浮かべた人と自分、どちらの方が好きですか?」
こんな質問をいきなりされたら、あなたはどう答えるでしょう?
もし、あなたが頭に思い浮かべた人を自分よりも好きと考えるのなら、次の質問について考えてみてください。
「本当に、自分よりその人の方が好きですか?」
私たちの心には意識と無意識が存在します。
そして、進化心理学的には、ヒトは意識的な答えと無意識的な答え、異なる答えを持っている場合があると考えることができます。
2012年の研究では、Dissociative Self-Preference Model、解離性自己選好モデルとでも訳される興味深いモデルについて説明しています。
まず、この研究では意識的にはヒトは自分より大事な人(親友やパートナーなど)を好むが無意識的にはヒトは大事な人より自分を好むということが示されています。
つまり、他人を優先するというシグナルを出す人が好まれるが、実際に優先する人は適応的でないので、私たちは表面的には他人を優先するが、暗黙のうちには自分を優先するようになっているというわけです。
私たちが仲間やパートナーを得る時、相応しい相手として選ばれる為には自分の良い部分を“シグナル”として示さなければなりません。
この時、「私はあなたよりも自分を大切にするよ」なんて言う人は他者から仲間やパートナーとして選ばれにくいでしょう。
すると、意識的には「私は自分よりあなたの方が大切!」と考える人の方が生き残り、子孫を多く残せるわけです。
しかし、実際に自分より他人の方が好きで、大事にする人は適応的と言えるのでしょうか?
そうした人は究極的には遺伝子を残しにくいでしょう(生死の状況で他人を優先する人の遺伝子は残らない)。
つまり、無意識的には自分をより好きで大事にする人の方が多くの遺伝子を残せると考えられるわけです。
こんな話を聞くと人間不信に陥ってしまいそうですが、残念なことに私たちヒトの本性はそういうものなのです。
参考文献:
Gebauer JE, Göritz AS, Hofmann W, Sedikides C (2012) Self-Love or Other-Love? Explicit Other-Preference but Implicit Self-Preference. PLOS ONE 7(7): e41789. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0041789
Baumeister, R. F., & Leary, M. R. (1995). The need to belong: Desire for interpersonal attachments as a fundamental human motivation. Psychological Bulletin, 117(3), 497–529. https://doi.org/10.1037/0033-2909.117.3.497
Sedikides, C., & Gregg, A. P. (2008). Self-Enhancement: Food for Thought. Perspectives on Psychological Science, 3(2), 102–116. https://doi.org/10.1111/j.1745-6916.2008.00068.x
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