男の子や女の子が生まれる要因とは?
男は賭け、女は手堅い投資
進化心理学的観点から分析する上で大切なことは、どうすればより確実に生き延び、より多くの子孫を残せるのかを考えることです。
そんな矜持を体現したような、進化心理学の古典的な理論を紹介しましょう。
トリヴァース・ウィラード仮説は哺乳類のメスにおいて、母親の状態がよくなければメスを産み、状態がよければオスを産むというものです。
なぜ、このようなことが起こるのでしょうか?
まずは、予想を立ててみましょう。
母親の状態が良くない場合、それは生まれてくる子にとっても環境が厳しいということです。
厳しい環境の場合、つまり生存が難しければ、子は自然と繁殖に力を入れることになります。
その場合、オスとメスのどちらが簡単に繁殖ができるでしょうか?
正解はメスです。
例えば、オス5匹、メス5匹の計10匹の集団があるとしましょう。
極端なことを言えば、オスが1匹いればメス5匹全て子どもは産めます。
このオスにとっては多くの子どもを残せるのでリターンはとても大きいでしょう。
しかし、残ったオス達にとってはリターンは全くありません。
それに比べて、メスは相手が誰であろうと産む数はあまり変わりません。
つまり、親にとってオスを産むことはハイリスク・ハイリターン、メスを産むことはローリスク・ローリターンの投資といえるでしょう。
環境が厳しければ、自然と同性同士の競争も厳しくなります。
そんな時に、遺伝子を残していくためにはメスに投資した方が良いのです。
では、どうやって母親は環境が厳しいときにメスを多く産むのでしょうか?
次はメカニズムを考えてみましょう。
母親は環境がよくなければ(つまりストレスを受けると)、オスの胎児を自然流産をします。
これによって、相対的に生まれてくる子はオスが多くなるわけです。
実際、ストレスを受けた母親からは多くの女の子が生まれることが確かめられています。
さらに、アメリカの大統領や副大統領を含むデータでは、第1コホート(ワシントン大統領からガーフィールド大統領)では息子の方が娘よりも多く生まれたことが報告されたいます(ただし、第2コホート:アーサー大統領からレーガン大統領ではほぼ同数の息子と娘が生まれた)。
参考文献;
Almond, D., & Edlund, L. (2007). Trivers–Willard at birth and one year: evidence from US natality data 1983–2001. Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences, 274(1624), 2491–2496. doi: 10.1098/rspb.2007.0524
Valente, C. (2015). Civil conflict, gender-specific fetal loss, and selection: A new test of the Trivers–Willard hypothesis. Journal of Health Economics, 39, 31–50. doi: 10.1016/j.jhealeco.2014.10.005
Betzig, L., & Weber, S. (1995). Presidents Preferred Sons. Politics and the Life Sciences, 14(1), 61-64. doi:10.1017/S0730938400011771
一部不正確な文章が含まれていましたので、ここにお詫びして訂正させていただきます。
訂正前:さらに、アメリカの大統領、副大統領、閣僚などは娘よりも息子を多く産むことが研究結果からわかっています。
訂正後:さらに、アメリカの大統領や副大統領を含むデータでは、第1コホート(ワシントン大統領からガーフィールド大統領)では息子の方が娘よりも多く生まれたことが報告されたいます(ただし、第2コホート:アーサー大統領からレーガン大統領ではほぼ同数の息子と娘が生まれた)。