集合知を生み出す方法
ヒトが集合知を生み出すのが難しいのは、ヒトが社会的動物だから
集合知とは集団の知恵が個体レベルを超えて現れることを指します。
自然界ではハチの集団意思決定が良い例です。
ハチは新しい巣へお引っ越しを行う際、どの場所が良いかをそれぞれが見て、評価した後に、ダンスを踊り、新しい場所の魅力を他の個体に伝えます。
熱心さがダンスにより伝われば、その場所へ他のハチが出向き、また同じことを繰り返します。
これにより、より良い新しい巣の場所が決定されます。
まとめると以下のようになります。
1. それぞれが異なる場所を探索
2. 巣に戻り、ダンスを披露(良い場所だと激しいダンス、よくない場所だとあまり激しくないダンス)
3. ダンスを見て、別の個体たちがまた訪れる
4. 帰ってきたハチは同じようにダンスを用いて新しい巣の場所を評価
実際、ハチたちが選ぶ新しい巣は(それぞれのハチは全ての場所を見て回るわけではないのに)科学的にも良い場所だと判断されています。
これと同じことを我々人類はできるのでしょうか?
実際には、なかなか難しいということがわかっています。
その理由は、ヒトは評価の独立性が保てないからです。(ハチたちは"空気"を読んだりしない。つまり、あまりよくない場所を気を遣って良い場所と判定しない)
ヒトが評価の独立性を保てないのは、ハチと我々の繁殖戦略の違いにあります。
働き蜂とは全て女王蜂から生まれた姉妹なのです。
つまり、巣とは1つの家族ということになります。
ハチたちが"空気"を読まないのは、巣が滅びるか生き延びるかという選択しかないからです(同調しない個体を仲間外れにしない)。
我々ヒトは血縁関係のない個体とも多く関わり合います。
その上で大切なのは、周りと同調することです。
同調しない個体は排斥などにより、生存リスクが低下してしまいます。
ハチにとって簡単な集合知は実はヒトが"空気"を読むために生み出されにくいのです。
参考文献;
Seeley, T. D., & Visscher, P. K. (2004). Group decision making in nest-site selection by honey bees. Apidologie, 35(2), 101–116. doi: 10.1051/apido:2004004