小児がんと配偶者
健康な配偶者を好むことは「病原体の回避」という直接的な利益を提供し、「子孫に有益な遺伝性免疫の獲得」という間接的な利益を提供する
小児がんの生存者は健康な人と比べて結婚する(人生のパートナーを持つ)可能性が低い
現代医学の進歩により、「不治の病」とされてきた病気も適切な治療を施せば完治することも多くなりました。
しかし、進化心理学は「過去には大病を患ったが、今は健康な人」と「過去から現在まで健康な人」には大きな違いがあると考えます。
例えば、健康な配偶者を好むことは「病原体の回避」という直接的な利益を提供し、「子孫に有益な遺伝性免疫の獲得」という間接的な利益を提供することが指摘されています。
「病原体の回避」という点においては「過去には大病を患ったが、今は健康な人」と「過去から現在まで健康な人」の違いはあまりないでしょう。
例えば、(大病ではありませんが)風邪を引いてる人を魅力的だとは思わないかもしれませんが、その人が健康になれば魅力度はそれ以外の点で判断されるでしょう。
さまざまな研究によれば、小児がんの生存者は健康な人と比べて結婚する(人生のパートナーを持つ)可能性が低いということがわかっています。
これは、病に罹るというのはそもそもその人の遺伝子が病気に弱いということを意味しますので、「過去には大病を患ったが、今は健康な人」と「過去から現在まで健康な人」には大きな違いが生じます。
つまり、「過去から現在まで健康な人」を配偶者として選ぶことは子孫に(病気に強い)遺伝子を受け継がせることになりますが、「過去には大病を患ったが、今は健康な人」を配偶者として選ぶと子孫に有害な遺伝子を受け継がせてしまうことになるというわけです。
参考文献:
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