繁殖価と血縁淘汰
甥、姪、おじ、おばと自分の血縁度は25%
しかし、繁殖価は次世代の方が高くなる
したがって、子どもを持たない女性はおじとおばではなく甥や姪により多く投資するようになる
子どもを持たない女性はなぜ淘汰されないのか?
よくある質問ですが、進化心理学的には「血縁淘汰」という概念が重要になってきます。
つまり、個人の遺伝子を多く残すためには何も自分が子どもを作る必要はなく、家族に対する投資を行うことでも自分の遺伝子は間接的にですが次世代に受け継がれるわけです。
2015年の研究は、この血縁淘汰の仕組みがヒトにも働いていると指摘しています。
この研究によると、「子どもを持たない女性はおじとおばではなく甥や姪により多く投資するようになる」ことがわかりました。
一見すると不思議な話です。
なぜなら、甥、姪、おじ、おばと自分の血縁度は25%ですので、普通に考えると皆同じだけ投資を受けても良いはずです。
しかし、繁殖価を考慮に入れると整合性が取れます。
繁殖価とはある年齢の個体が次世代に残しうる子どもの数として定義されますので、若い人どもほど年老いた人に比べて繁殖価が高いわけです。
つまり、血縁度が高く、繁殖価が高い親族に投資を行うことで子どもを産まないヒトも淘汰されなくなるわけです。
次世代に遺伝子を残すということを考えると、次の世代への投資を犠牲にしてまで前の世代に投資をすることは不適応的と考えられるというわけです。
参考文献:
TANSKANEN, A. (2015). CHILDLESSNESS AND INVESTMENT IN NIECES, NEPHEWS, AUNTS AND UNCLES IN FINLAND. Journal of Biosocial Science,47(3), 402-406. doi:10.1017/S0021932014000339