抱っこと運搬効率
母親の抱っこは乳児の泣き、体の動き、心拍数を減少させる
マウスでも、同じような鎮静反応が運搬中に観察される
抱っこすると乳児が落ち着くのは、母親の運搬効率を高める為
泣いている乳児を母親が抱っこすると落ち着く。
そんな場面を見て、母子の深い愛情に感動することがありますが、私たちは重要なことを見落としているのかもしれません。
なぜ、抱っこすると落ち着くのでしょうか?
母親への安心感?
それだけでは進化心理学的な説明としては不十分ではないでしょうか?
もし、「抱っこすると乳児は落ち着く」という乳児の反応を適応的な行動として捉えるとどういう仮説が立てられるのでしょうか?
2013年の研究から、「母親の抱っこは乳児の泣き、体の動き、心拍数を減少させる」ということがわかりました。
さらに興味深いのは、「マウスでも、同じような鎮静反応が運搬中に観察される」ということです。
ヒトであれ、マウスであれ、親が子を抱える(運ぶ)時には子は落ち着くのです。
つまり、「抱っこすると乳児が落ち着くのは、母親の運搬効率を高める為」ということが主張できるわけです。
確かに、泣いている子どもが抱っこしても落ち着かなければ母親の運搬コストは上昇してしまうので、子どもにとってもそれは不適応的(運んでもらえない)と言えるでしょう。
抱っこすると乳児が落ち着く、そんな愛情溢れる場面を単なる「運搬効率の上昇の為」として捉えてしまうところが進化心理学がロマンチックでないと言われる所以かもしれません。
参考文献:
Esposito, G., Yoshida, S., Ohnishi, R., Tsuneoka, Y., del Carmen Rostagno, M., Yokota, S., ... & Kuroda, K. O. (2013). Infant calming responses during maternal carrying in humans and mice. Current Biology, 23(9), 739-745.