配偶者選好の性差の大きさ
配偶者選好の性差を単変量解析でなく多変量解析で検討した2015年の研究
37の文化圏からの参加者(n = 10,153)のデータを分析した結果、性差の大きさは、Mahalanobis D = 2.41
男女の重複率は22.8%に過ぎず、どのような配偶者を好むのかという知識だけでも92.2%の精度で性別を正しく分類することができた
男性と女性がどのような異性を好むのかは、多くの文化や個人の違いによって少しずつ異なります。
進化心理学は、これらの好みの背後にある普遍的な要素を探求し、人間の配偶戦略やパートナー選択の根底にある原理を理解しようとしています。
しかし、実際に問題となるのは、この性差がどの程度存在するのかという点です。
男性と女性の好みには確かに違いがあるのかもしれませんが、その差が無視できるほどに小さいことも十分に考えられます。
今回は配偶者選好の性差を単変量解析でなく多変量解析で検討した2015年の研究から性差をどのように理解すべきか考えてみましょう。
この研究ではマハラノビス距離(Mahalanobis D)とロジスティック回帰が集められたデータの分析に用いられました。
マハラノビス距離(Mahalanobis D)は多変量データにおいて、異なるサンプル間の類似性や距離を測定するために使用される統計的手法です。
マハラノビス距離はデータの相関構造を考慮して距離を計算するところに特徴があります。
一方、単変量解析(Cohen’s d)では、一つの変数に基づいて2群の平均値の差の大きさを示しますので、変数間に相関が存在する場合、評価が適切でない可能性があります。
例えば、2つの地域から取られたりんごの違い(重さ、味、色)を説明する場合を考えてみましょう。
単変量解析(Cohen’s d)を平均化する場合にはそれぞれの変数(重さ、味、色)に対して個別に分析を行い、最後に効果量を平均化して全体の評価を行います。
一方、マハラノビス距離を用いる場合、複数の変数(重さ、味、色)の相関関係を同時に考慮して比較を行います。
したがって、2つの地域から取られたりんごがどれだけ異なるのかという評価を最終的に行う際には複数の変数(単変量解析)を平均化した従来の方法ではなく多変量解析(マハラノビス距離)を用いることが、適切な評価につながる可能性があるというわけです。
本題に戻ると、37の文化圏からの参加者(n = 10,153)のデータを分析した結果、性差の大きさはMahalanobis D = 2.41で、男女の重複率は22.8%に過ぎず、どのような配偶者を好むのかという知識だけでも92.2%の精度で性別を正しく分類することができました。
この効果の大きさは心理学研究において非常に顕著なものであると言えます。
この研究は配偶者の選択における性差の大きな違いを示しているだけでなく、従来過小評価されていた性差の大きさが、適切な統計的手法を使用することで、実際にはかなり大きいことが示される可能性があることを示唆しています。
参考文献:
Conroy-Beam, D., Buss, D. M., Pham, M. N., & Shackelford, T. K. (2015). How sexually dimorphic are human mate preferences?. Personality and Social Psychology Bulletin, 41(8), 1082-1093.
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