包括適応度から考える自殺する理由
繁殖が上手くいかず、血縁者に負担をかけるくらいなら自殺する
人はなぜ自殺をするのでしょうか?
生物(遺伝子)にとっては生存・繁殖こそが最大の目的であり、それ以外の目的は無いに等しいと言っても過言ではないくらい生存と繁殖は重要なものです。
では、なぜ自分の命を断つ人が多くいるのでしょうか?
一見不可解である自殺を説明しようとする理論は複数存在します。
自殺を適応的な行動とする見方としては、包括適応度の考え方が使われます。
包括適応度では個人の適応度(自分がどれだけ子どもを多く作れるか)だけでなく、自分の遺伝子を含む血縁者の適応度(きょうだいや甥、姪などの繁殖の成功)も気にします。
つまり、血縁者を助けるということは自分の遺伝子を結果的に増やすことに繋がり、血縁者に助けてもらうということは自分の遺伝子が結果的に減ることに繋がるというわけです。
もちろん、血縁者同士で助け合うことはとても大切なのですが、血縁者への負担が大きくなりすぎることは問題です。
ある研究によると、恋愛に上手くいかない(繁殖に失敗している)ことや家族に負担をかけていると思うことは自殺企図(自殺をしようとする意思)と正の相関がありました。
つまり、生きていても、繁殖をして自分の遺伝子を増やすことができる可能性が低く、血縁者の資源を使い続けて包括適応度を低下させるくらいなら自殺をした方が(遺伝子的には)マシということになります。
参考文献:
Catanzaro, D. D. (1995). Reproductive status, family interactions, and suicidal ideation: Surveys of the general public and high-risk groups. Ethology and Sociobiology, 16(5), 385-394. doi:10.1016/0162-3095(95)00055-0