傾斜角度の過大評価
坂は登るより下る方が危険
上から見る方が傾斜角度を過大視する
ウォータースライダーで遊んでいる人を見ると、楽しそうだと思い、自分も頂上に登ってみると思ったより角度が急だった、なんて経験はありませんか?
実際、研究結果からヒトは傾斜角度を頂上から見た場合は過大視することがわかっています。
つまり、下から見る時よりも角度が急だと思うということです。
この心理メカニズムを解き明かすには、坂を登るコストと下るコストについて考える必要があります。
例えば、角度が45°の坂を登る場合と下る場合を考えてみましょう。
坂の角度を30°だと判断して登る場合、実際には45°なわけですから、傾斜角度を過小評価することには危険が伴います。
同じ条件でも(45°の坂を30°だと判断して)、下る場合はもっと危険です。
なぜなら、登るのは無理だと思ったら登るのを止めて引き返せばいいのですが、下る場合は滑落の危険などが付き纏います。
つまり、坂の角度を過小評価することは登る時(下から)より下る時(上から)の方が危険というわけです。
そう考えると、どのような個体が生存に有利だったか自ずと理解できます。
もちろん角度を過大評価する個体です。
つまり、高いところから(頂上から)坂を見る時に下から見る時よりも角度が急に見える個体が生き残ってきたというわけです。
これを踏まえるとウォータースライダーはなぜ上から見る方が怖いのかがわかります。
ウォータースライダーを下から見て、あまり急な角度じゃないから簡単に滑れるなぁと思うのは考えものですね。
参考文献:
Proffitt, D.R., Bhalla, M., Gossweiler, R.et al. Perceiving geographical slant. Psychon Bull Rev2,409–428 (1995). https://doi.org/10.3758/BF03210980
Stefanucci, J. K., Proffitt, D. R., Clore, G. L., & Parekh, N. (2008). Skating down a steeper slope: fear influences the perception of geographical slant.Perception,37(2), 321–323. https://doi.org/10.1068/p5796