記憶の進化的な分析
さまざまな情報源(ニューヨーク・タイムズ、親の発話、Eメール)を調べた結果、記憶が必要とされる確率はある単語が頻繁に繰り返されるほど、最近繰り返されるほど、繰り返しが特定の時期に集中しないほど高いことが判明
将来に必要な情報ほど記憶されやすいことを示唆
学生の時にあんなに時間をかけて覚えた英単語や数学の公式、化学式などは社会人になると多くの人が忘れてしまうのではないでしょうか?
なぜ私たちは長い時間をかけて勉強したことを忘れてしまうのでしょうか?
教育のせいでしょうか?
努力不足のせいでしょうか?
その結論を出す前に、記憶について進化心理学的な観点から考えてみましょう。
1991年に行われた研究によると、さまざまな情報源(ニューヨーク・タイムズ、親の発話、Eメール)を調べた結果、記憶が必要とされる確率はある単語が頻繁に繰り返されるほど、最近繰り返されるほど、特定の時期に繰り返しが集中しないほど高いことが判明しました。
つまり、頻繁に繰り返されない対象は覚えている必要がなく、最近繰り返されない対象は覚えている必要がなく、過去のある時期のみ繰り返しが集中していた対象は覚えている必要がないというわけです。
これは、将来に必要な情報ほど記憶されやすいことを示唆しています。
例えば、餌が同じ場所で何度も見つかる場合、その場所を覚えていた方が適応的でしょう。さらに、たとえ餌が数回しか見つからずとも、最近繰り返し見つかっているのなら、同じように覚えていた方が良いでしょう。反対に、過去に何度も同じ場所で餌が見つかっても、最近見つからなくなったのであれば、覚えている必要性は低いでしょう。
私たちが勉強したことを忘れてしまうのは、単に将来必要な確率が低いからなのです。
参考文献:
Anderson, J. R., & Schooler, L. J. (1991). Reflections of the environment in memory. Psychological science, 2(6), 396-408.