妊婦の営巣行動
妊娠後期に妊婦の営巣行動はピークに達する
鳥類や昆虫などを含む多くの生物は巣を作ります。
蜂の巣やアリの巣を見たことはないでしょうか?
巣を作ることは母子(もしくは親と子)を保護する機能を提供すると考えられています。
考えてみると当たり前ですが、巣があることは雨をしのいだり、風を避けたりとさまざまなメリットを提供してくれます。
では、雨風しのげる家を持ち、捕食者の影響を気にする必要のない我々人類にも多くの生物と同じように営巣行動(巣を作る行動)は見られるのでしょうか?
ある研究では、妊娠後期にピークに達する営巣行動が妊婦にも見られることがわかりました。
ここでいう営巣行動とは部屋を綺麗にするなどの「環境を整えること」と信頼できない相手とは距離を取るなどの「社会的な選択」でした。
「環境を整えること」は巣を作ることと関連がありそうなのですが、なぜ信頼できない相手を避けるような行動も営巣行動と言えるのでしょうか?
「社会的な選択」、つまり社会的に孤立することはさまざまなメリットをもたらします。
霊長類や祖先の環境を考えるとわかりやすいのですが、社会的に孤立することは新生児と母親がお互いを認識するのに役立ちますし、感染症を避けたり、同種による嬰児殺し(赤ちゃんを殺すこと)を避けることにも繋がります。
巣を作り、我が子を守りたいという思いは現代のような環境でもいまだに本能として機能しているということでしょう。
参考文献:
Anderson, M. V., & Rutherford, M. (2013). Evidence of a nesting psychology during human pregnancy. Evolution and Human Behavior, 34(6), 390-397. doi:10.1016/j.evolhumbehav.2013.07.002
Turner, S.E., Fedigan, L.M., Nakamichi, M.et al.Birth in Free-rangingMacaca fuscata.Int J Primatol31,15–37 (2010). https://doi.org/10.1007/s10764-009-9376-8