The Signaling Theory of Symptoms (STS)
偽薬であっても治療に改善が見られる(プラシーボ効果)のは、わかりやすい症状(発熱や痛みなど)が体の防御や治癒の目的だけでなく、他者に支援の必要性を知らせるシグナルでもあるから
助けや治療を受けることができれば、このシグナル機能が果たされ症状は軽減する
風邪をひいたので、家族に薬を買ってきてもらい、その薬を1錠飲んでみると、なんだか気分が良くなった。しかし、パッケージをよく見てみると、ただのサプリメントだった。そう間違った商品を買ってこられたのです。
そんな経験ありませんか?
これは、プラシーボ効果(偽薬であっても治療に改善が見られる)として知られていますが、なぜ偽物でも効果が出ることがあるのでしょうか?
この不可解な現象を説明するために、進化心理学ではThe Signaling Theory of Symptoms(症状のシグナリング理論)という画期的な理論が生まれています。
つまり、免疫反応のわかりやすい特徴(発熱、腫れ、明らかな痛みの兆候などの症状)は、体の防御や治癒の目的だけでなく、他者に支援の必要性を知らせるシグナルでもあるというものです。
風邪をひいた時には、体内の免疫システム以外にも、他者からの支援を多く必要とします(食べ物や飲み物を用意してもらうなど)。
つまり、風邪をひいていると他者にシグナルを送る必要があるわけです。
したがって、助けや治療を受けることができれば、このシグナル機能が果たされ症状は軽減するというわけです。
「痛い!痛い!苦しい!苦しい!」という人が必要としているのは(もちろん、治療ですが)他者の支援なのです。
「それくらい平気でしょ!」と返すのではなく、やさしい気持ちで看病してあげてはいかがでしょうか?
参考文献:
Steinkopf, L. (2015). The signaling theory of symptoms: an evolutionary explanation of the placebo effect. Evolutionary Psychology, 13(3), 1474704915600559.