霊長類における犬歯の役割
犬を含む多くの哺乳類では犬歯は肉を食べるのに役立つ
ヒトを含む霊長類では犬歯はオス同士の争いで役立つ
ライオンやチーター、犬を含む多くの肉食動物は立派な牙を持っています。
牙とは犬歯のことですが、なぜ犬歯は存在するのでしょうか?
肉食動物と草食動物を比較する際によく言われるのは、肉食動物は肉を切り裂く必要があるので、立派な犬歯を持つことが重要ということです。
確かに、この説明は当たっています。
しかし、ヒトを含む霊長類を比較する際には別の説明が存在します。
その前に、前提としてヒトを含む霊長類では犬歯のサイズに大きな性差が見られることを踏まえておかなければなりません。
つまり、オスはメスに比べて大きな犬歯を持つわけです。
これは、なぜなのでしょうか?
肉を食べるためだけに犬歯が使われるのであれば、男女とも肉を食べる必要があるので、メスがオスに比べて小さな犬歯を持つ理由が説明できません。
人類学や進化心理学の研究で言われるのは、霊長類の進化においては犬歯の大きさは攻撃性と関連があったということです。
実は、進化の歴史においては犬歯のサイズの性差は減少してきました。
これは、オス同士の争いが減少してきたということを示唆しています。
ヒトに関していえば、犬歯が小さいのは少なくとも他の種よりは"平和"だったからでしょう。
参考文献:
Suwa, G., Asfaw, B., Kono, R. T., Kubo, D., Lovejoy, C. O., & White, T. D. (2009). The Ardipithecus ramidus skull and its implications for hominid origins. Science (New York, N.Y.), 326(5949), .
Plavcan J. M. (2012). Sexual size dimorphism, canine dimorphism, and male-male competition in primates: where do humans fit in?. Human nature (Hawthorne, N.Y.), 23(1), 45–67. https://doi.org/10.1007/s12110-012-9130-3
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