美術の好みの顕在的・潜在的尺度での測定の違い
潜在的な評価では芸術の専門知識の程度に関わらず対称性を好む
しかし、明示的な評価では美術の専門知識が高いほど、非対称性の美しさに対する評価が上昇
美術の専門家は好みを明示的に尋ねられると、非対称性の美しさを強調する傾向がある
美的感覚が無い一般人からすると、美大生などが描く絵は難解で理解不能なことがよくあります。
デッサンを見ると非常に絵が上手なことがわかるので、もちろん絵が下手なわけではありません。
なぜ、美大生はデッサンなど、一般の人がわかりやすい絵ではなく、難解な“変わった絵”を描くのでしょうか?
2018年の研究は、美術の専門家と非専門家の間での対称性と非対称性の好みの違いを調べました。
この研究では好みの測定方法として、暗示的な方法と明示的な方法が取られました。
暗示的な評価はIAT(Implicit Association Test:潜在的連合テスト)を用いましたが、明示的な評価は直接美しさを参加者に尋ねました。
その結果、IATでは、芸術の専門性は、対称的なパターンと非対称的なパターンの好みを変えませんでした(専門知識に関わらず、対称性を好む)。
一方、明示的評価尺度では、(やはり非対称パターンよりも対称パターンを好むが)美術の専門知識が高いほど、非対称パターンの美しさに対する評価が有意に上昇しました。
これらの結果は、専門家は好みを明示的に尋ねられると、非対称性の描写の美しさを強調する傾向があることを示唆しています。
野暮な言い方をしてしまえば、「美術の知識がある人は“わざと”非対称性の好みをアピールしている」というわけです。
創造性が重要視される芸術の世界では納得できるような結果な気がします。
参考文献:
Weichselbaum, H., Leder, H., & Ansorge, U. (2018). Implicit and explicit evaluation of visual symmetry as a function of art expertise. i-Perception, 9(2), 2041669518761464.
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