Cognitive Reflection Test(CRT)の3つの問題と成績の性差
Cognitive Reflection Test(CRT)の紹介(Frederick, 2005)
CRTは質問に対して熟考し、最初に思い浮かんだ回答を報告しない能力を測る簡単な尺度(オリジナルの研究では以下の3つの問題を提案)
(1) バットとボールの値段は合計1.10ドルです。バットはボールより1ドル高いです。ボールの値段はいくらですか。
(2) 5台の機械で5個の製品を作るのに5分かかるとすると、100台の機械で100個の製品を作るのに何分かかりますか。
(3) ある湖にスイレンの葉が浮いています。毎日、スイレンの葉は2倍の大きさになります。スイレンの葉が湖全体を覆うのに48日かかるとすると、スイレンの葉が湖の半分を覆うには何日かかりますか。
オリジナルの研究では、男性の成績(平均1.47点)は女性の成績(平均1.03点)よりも有意に高かった(3点満点)
いわゆる「バットとボール問題」は時々インターネットの世界に現れては、問題を知らない人々の興味を引きますが、そもそもなぜこのような問題があるのか?や問題の続きを知る方は多くないかもしれません。
今回はCognitive Reflection Test(CRT)の紹介です(Frederick, 2005)。
CRTは質問に対して熟考し、最初に思い浮かんだ回答を報告しない能力を測る簡単な尺度で、オリジナルの研究では以下の3つの問題が提案されました。
原文や解答を知りたい方はFrederick (2005)を参照ください。
(1) バットとボールの値段は合計1.10ドルです。バットはボールより1ドル高いです。ボールの値段はいくらですか。
(2) 5台の機械で5個の製品を作るのに5分かかるとすると、100台の機械で100個の製品を作るのに何分かかりますか。
(3) ある湖にスイレンの葉が浮いています。毎日、スイレンの葉は2倍の大きさになります。スイレンの葉が湖全体を覆うのに48日かかるとすると、スイレンの葉が湖の半分を覆うには何日かかりますか。
心理学者は測定したい対象を測定するために、尺度をよく作ります。オリジナルの研究に従えば、バットとボールの問題だけなく、残りの2つの問題も含めてCRTを測定することになります(ただ、尺度が改訂されることはよくありますし、バットとボール問題だけで不十分かというとそうでもないのですが、複数の項目を使うことにより、一貫した傾向を測定することができたり、他の研究者と共通した尺度を使うことで、研究間での比較が容易にできるなどのメリットがあります)。
ちなみに、オリジナルの研究では、男性の成績(平均1.47点)は女性の成績(平均1.03点)よりも有意に高かった(3点満点)ことがわかっています。
こういった問題はたくさんあるのですが、なぜ多くのヒトがこのような(一見単純に見える)問題を間違えてしまうのかという点を進化心理学的な観点(ヒューリスティックや生態学的妥当性など)から考えてみると面白いと思います。
参考文献:
Easton, C. (2021). Women and ‘the philosophical personality’: Evaluating whether gender differences in the cognitive reflection test have significance for explaining the gender gap in philosophy. Synthese, 198(1), 139-167.
Frederick, S. (2005). Cognitive reflection and decision making. Journal of Economic perspectives, 19(4), 25-42.
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