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身近な人の死が未来を縮める

身近な人との死別と将来の捉え方


身近な人との死別は将来の捉え方を変化させる

私たちの考え方は意外と多くのことに左右されます。


そう聞くと、「意思」って何だろう?とか「心」って何だろう?と思う方もいるかもしれませんが、環境の中で私たちが生きていると考えると、不思議なことではありません。


生物は環境の中を生きていかなければいけないので、環境を無視して行動することは無意味なのです。


例えば、洋服を買う時も、夏はTシャツ、冬はセーターというように私たちは環境に応じて「買いたい!」と思う商品が変化します。


年中セーターが「欲しい!」という人はあまりいないでしょう。


進化心理学に関する多くの研究も環境から得られる情報に対してヒトがどう考え方を変化させるのかを明らかにしてきました。


ある研究によると、身近な人との死別は理想的な最初の出産の年齢を低下させたり、実際に最初の出産のリスクを高めたり、現在の価値と比べて未来の価値を割り引くことに関連するようです。


つまり、身近な人が亡くなると、周囲の親しい人間は、「自分には残された時間が少ない」と感じ、早く子どもを産みたくなり、実際に子どもを早く産む可能性が高くなるということです。


さらに、将来は長くないと感じることは、同じ価値のものでも「すぐに欲しい」と考えることに繋がります。


経済学では「時間割引」と言われるこの考え方ですが、時間割引率が低い人は、ドーナツ1個を今貰っても1年後に貰っても同じように喜びますが、時間割引率が高い人は、ドーナツ1個の価値が時間の経過とともに減少してしまうので、1年後にドーナツを貰うことをあまりうれしいと感じません。


身近な人が亡くなる→自分の時間は短い→報酬はすぐにでも欲しい


という流れになるわけです。


個人に特有の考え方を環境との相互作用として考えると、この流れは合理的と言えますが、現代社会では経済力の無い若者による出産はさまざまな問題を引き起こす可能性があり、時間割引率が高いことはギャンブルにはまったり、年金や税金を払わないということにも繋がる可能性があるので、注意が必要だと思われます。


参考文献:


Pepper, G. V., & Nettle, D. (2013). Death and the time of your life: Experiences of close bereavement are associated with steeper financial future discounting and earlier reproduction. Evolution and Human Behavior, 34(6), 433-439. doi:10.1016/j.evolhumbehav.2013.08.004

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