いつ、誰を真似るべきなのか?
チンパンジーは地位が低い時や状況が不確実な時に、高い地位の個体や知識のある個体を真似る
近年では、出世をしたくない人たちが増えているという話もありますが、そんな状況でも「出世をしたい!」と意欲を燃やす人はどのような戦略を取ればよいのでしょうか?
チンパンジーに関する研究は、ヒト本来の模倣行動についての知見を提供してくれる可能性があります。
なぜなら、現代人はあまりにも多くの情報に曝されているため、直接現代人を研究しても「ヒト」が本来適応してきた環境や行動様式を素直に観察することができない可能性が高いからです。
「メディアの影響で~最近の若者は~」などと言われるものがその代表格です。
チンパンジーを用いた研究によると、チンパンジーは地位が低い時や状況が不確実な時に、高い地位の個体や知識のある個体を真似ることがわかっています。
順を追って考えてみましょう。
誰かを真似る時とはいつでしょうか?
会社組織で考えてみると、新入社員と上司、どちらが他者を真似るのでしょうか?
一般的に考えると、右も左もわからない新入社員と言えます。
これは、チンパンジーの研究で言うところの地位の低い個体がよく真似るということです。
次に、状況について考えてみましょう。
同じ新入社員でも、持っている知識には差があります。
そんな時、知識がある人と知識が無い人はどちらの方が真似るのでしょうか?
これも、知識が無い人の方がよく真似ると予想がつきます。
言い換えると、状況が不確実な時と言えます(全く知識が無い人にとっては会社は何が起こるかわからないという不確実な状況だから)。
これは、チンパンジーの研究で言うところの状況が不確実な時に他個体を真似るということです。
最後に、誰を真似るべきか考えてみましょう。
チンパンジーが真似るのは地位の高い個体や知識のある個体でした。
同じことが会社でも言えます。
新入社員が真似るべきなのは地位が低く、何の知識もない同僚ではなく、地位が高く、ノウハウを知っている上司なのです。
チンパンジーが模倣行動に関して一連のメカニズムを備えているのは成功する為に合理的な戦略と言えます。
結局、会社で成功するためには、自分の地位が低かったり知識が無ければ上司を真似し、上司になれば、同僚や部下の真似をしているだけではいけないということでしょう。
参考文献:
Kendal, R., Hopper, L. M., Whiten, A., Brosnan, S. F., Lambeth, S. P., Schapiro, S. J., & Hoppitt, W. (2015). Chimpanzees copy dominant and knowledgeable individuals: Implications for cultural diversity. Evolution and Human Behavior, 36(1), 65-72. doi:10.1016/j.evolhumbehav.2014.09.002