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ヒトの精子はゴリラに近いのか?チンパンジーに近いのか?

人間、ゴリラ、チンパンジーの精子の比較


精子競争と精子の機能や形態のレビュー(van der Horst and Maree, 2014)
精子濃度、精子の遊泳速度、精子の形態の点から、ヒトの精子はチンパンジーの精子(高い精子競争)よりもゴリラ(低い精子競争)の精子に近い
ヒトの精子は精子競争のリスクが低いことによる進化の結果として、貧弱である

人間も生物なのだと感じる特徴の一つに「精子」があります。


精子は私たち人間だけが持つ特徴ではもちろんありません。


生物によって数も形も異なりますが、同じ霊長類で比較した時、ヒトの精子はどのような特徴を持っているのでしょうか?


精子競争と精子の機能や形態のレビュー(van der Horst and Maree, 2014)を見てみましょう。


この研究では、精子についてさまざまな観点から先行研究のレビューを行なっています。


特にヒトについての言及をご紹介すると、チンパンジーの精子濃度はヒトやゴリラよりも非常に高く、精子の遊泳速度はヒトとゴリラで重複しており、ヒトやゴリラでは正常な形態を持つ精子の割合が低いことがわかっています(精子競争が低いと正常な形態の精子を維持するのに高いコストを支払う必要がなくなる)。


つまり、精子濃度、精子の遊泳速度、精子の形態の点から、ヒトの精子はチンパンジーの精子(高い精子競争)よりもゴリラ(低い精子競争)の精子に近いということが結論として導き出されました。


また、精子競争の観点から考えると、ヒトの精子は精子競争のリスクが低いことによる進化の結果として、貧弱であることが示唆されました。


厳しい選択圧がかかり続けなければ、いずれ形質は貧弱になるということがわかるレビューです。


参考文献:


van der Horst, G., & Maree, L. (2014). Sperm form and function in the absence of sperm competition. Molecular reproduction and development, 81(3), 204-216.

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