男女に働く二つのバイアス
男女が異性の性的関心を誤認するかスピードミーティングによって調べた実験
女性は男性の性的関心を過小評価
男性は女性の性的関心を過大評価
男性は魅力的な女性の性的関心をより過大評価
自分をより魅力的だと評価する男性は女性の性的関心をより過大評価
皆さんは異性と出会う際に、自分が思ってたほど相手は自分に関心を持ってくれていない、とか相手が思ったよりも自分に関心を持っていると感じたことはありませんか?
今回はそんな異性との“勘違い”についてのお話です。
まずは、男女が異性の性的関心を誤認するかスピードミーティングによって調べた2012年の実験を見てみましょう。
この実験では、スピードミーティング(短い間での会話)を使って男女に異性を評価させました。
そして、その後「参加者のパートナーに対する関心の推定値」から「パートナーが参加者に対して表明した関心」を差し引くことでどれほど参加者がパートナーの性的意図を誤認していたかのスコアを算出しました。
これで、男性と女性がどれほど異性との性的関心を過大知覚(多く見積もる)しているか過小知覚(少なく見積もる)しているかわかります。
その結果、女性は男性の性的関心を過小評価し、男性は女性の性的関心を過大評価する。また、男性による女性の性的関心の過大評価は女性が魅力的であるほど高く、自分をより魅力的だと評価する男性ほど女性の性的関心を過大評価することがわかりました。
これは、男性の性的過大知覚バイアス(Sexual Overperception Bias)と女性の性的過小知覚バイアス(Sexual Underperception Bias)を裏付ける研究結果です。
つまり、エラー管理理論により、男女ともエラーによるコストを最小化させようとした結果、男性は異性との貴重な出会いを逃さないように、女性は異性との出会いに慎重になるようなバイアスがそれぞれ働いているというわけです。
もう少し詳しく述べると、勘違いには2種類エラーが存在します。
1つ目のエラーは第1種の過誤や偽陽性(False Positive)と呼ばれるもので、この状況だと異性が自分に実際には関心が無いのに、関心があると勘違いすることです。
2つ目のエラーは第2種の過誤や偽陰性(False Negative)と呼ばれるもので、この状況だと異性が自分に実際には関心があるのに、関心がないと勘違いすることです。
男性と女性がそれぞれのエラーを犯した時、何が起こるのでしょうか?
まず、男性から考えてみましょう。
男性が第1種の過誤を犯すと、誤って女性にアプローチをしてしまうことになり、断られたり、恥ずかしい思いを経験するかもしれませんが、それほど繁殖には大きな問題ではありません。
もし、第2種の過誤を犯すと、貴重な異性との出会いの機会を失ってしまいます。
女性の場合はどうでしょうか?
もし女性が第1種の過誤を犯すと、自分に気がない男性にアプローチしてしまうわけですから、一時の過ちが妊娠や出産、子育てという多大な苦労を招くことになるかもしれません、
一方、第2種の過誤を女性が犯しても、次の男性との出会いは女性にとってそこまで大変なことでは無いので、問題ありません。
したがって、異性の性的関心については男性は第1種の過誤を、女性は第2種の過誤を犯しやすい方向にバイアスがかかっているというわけです。
ここでご紹介したエラー管理理論はさまざまな仮説に応用されているので、調べてみるととても面白いと思います。
参考文献:
Perilloux, C., Easton, J. A., & Buss, D. M. (2012). The misperception of sexual interest. Psychological Science, 23(2), 146–151. https://doi.org/10.1177/0956797611424162
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