悲しみのコストとメリット
悲しみにはコストがかかる
悲しみの度合いが高い人は忠誠的な良い人だと思われやすい
悲しみの度合いが高い人は信頼できる社会的パートナーとして選択されやすい
愛する人や昔からの仲間が亡くなった時、絶望に暮れる人は多いでしょう。
今まで過ごしてきた多くの時間を考えると、涙が止まらない。
そんな経験を多くの人はします。
しかし、「誰かが亡くなり、それを悲しむ人がいる」という話を聞いてもそこで終わらないのが進化心理学者というものです。
進化心理学者はなぜ「悲しい」という感情や「悲しむ」という行為をするのかに注目してしまいます。
ビジネスと同じように、動物やヒトの考え方や行動はリターンがコストを上回らなければ基本的には受け継がれていきません。
冒頭の話を例にとって考えてみましょう。
親友が亡くなった時、その親友はどんな手段を用いても帰ってきません。
そんな状況で悲しむというのは一見不合理な事のように思えます。
なぜなら、多くの研究でも指摘されているように悲しみや泣くという行為はコストがかかります(生理学的な変化など)。
階段を上り下りするのを何のメリットもない中でやる人はいないと思います。
階段を上り下りするというコストがなんらかのメリット(ダイエットになるなど)が上回った時に初めて私たちは階段を上り下りするのです。
親友を亡くした時の悲しみも同じと言えます。
なんらかのメリットが存在しなければ、コストだけを払うことになりますので、私たちの感情の一部には悲しみは受け継がれてこなかったでしょう。
2015年の研究で指摘されているのは、悲しみには生理学的な変化によってもたらされるコストだけでなく、生存や繁殖に繋がるようなメリットが存在するということです。
具体的には、悲しみの度合いが高い人は忠誠的な良い人だと思われやすく、信頼できる社会的パートナーとして選択されやすいということです。
その他大勢からしてみると、親友が亡くなって大泣きしているような人は信用できる人間なんだと判断できる要素になるということです。
つまり、本人にその気が無くても、親友が亡くなった時に悲しくて泣いてしまうような人は結果的に得をしてきたので、わたしたちにはそもそも、親しい人が亡くなれば悲しくて泣いてしまうというような一連のメカニズムが備わっているわけです。
参考文献:
Fredrick, J. F. (1971). Physiological Reactions Induced by Grief. OMEGA - Journal of Death and Dying, 2(2), 71–75. https://doi.org/10.2190/GY55-0GYA-CJA4-64T4
Reynolds, T., Winegard, B. M., Baumeister, R. F., & Maner, J. K. (2015). The long goodbye: A test of grief as a social signal. Evolutionary Behavioral Sciences, 9(1), 20–42. https://doi.org/10.1037/ebs0000032
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