乳児の失われゆく顔認識能力
生後3ヵ月の白人の乳児は4つの民族(アフリカ、中東、白人、中国人)を識別可能
生後6ヵ月の白人の乳児は白人と中国人のみ識別可能
生後9ヵ月の白人の乳児は白人のみ識別可能
人は生まれてから死ぬまで発達を続けます。
幼い頃には歩くこともできない乳児は発達するにつれて歩けるようになり、走れるようになります。
成人後には年を取れば取るほど肉体的には衰えていきますが、新たな知識を吸収することによる知能面での発達が見込めます。
ここで言う発達とはできないことができるようになるというようなものですが、反対にできることができなくなるというような発達もあります。
例えば、大人は自民族の顔を識別することは得意ですが、他の民族の顔を識別することは不得意です。
しかし、実は乳児にはこのような傾向はみられず、どの民族の顔も容易に識別することができます。
具体的には、生後3ヵ月の白人の乳児は4つの民族(アフリカ、中東、白人、中国人)を識別可能ですが、生後6ヵ月で白人と中国人のみ、生後9ヵ月では白人のみ識別が可能になります。
つまり、顔の識別能力とは成長するにつれて失われてゆく能力なのです。
なぜこのような発達の仕方をするのでしょうか?
そもそも、私たちが自民族と他の民族を分類するのには意味があります。
進化の観点からは、基本的に人種が異なる人々(馴染みでない顔の人々)は危険な存在と言えます。
つまり、馴染みでない人々を区別するために自民族に特化した顔認識能力が発達するわけです。
しかし、生まれたばかりの段階では、自分がどんな民族なのかはわかりませんので、成長するにしたがって普段接している人々に特化した顔認識を発達させることになります。
なので、生後3ヵ月の段階では全ての人種を等しく識別可能だということです。
できないことができるようになるのも発達ですし、できることができなくなるのも発達というのはなんだか不思議な感じがします。
参考文献:
Kelly, D. J., Quinn, P. C., Slater, A. M., Lee, K., Ge, L., & Pascalis, O. (2007). The Other-Race Effect Develops During Infancy: Evidence of Perceptual Narrowing. Psychological Science, 18(12), 1084–1089. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2007.02029.x
Kelly, D. J., Liu, S., Lee, K., Quinn, P. C., Pascalis, O., Slater, A. M., & Ge, L. (2009). Development of the other-race effect during infancy: evidence toward universality?. Journal of experimental child psychology, 104(1), 105–114. https://doi.org/10.1016/j.jecp.2009.01.006
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