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道徳観は簡単に変わるのか?

戦略的に変わる平等か公平かという分配ルール


道徳観が自己利益に基づいていることを示した2014年の研究
3つの実験(経済ゲーム)において、参加者がパートナーと利益を分配する際に、平等(同じ支払い)を重視するか公平(努力に比例する支払い)を重視するか分析
人々の道徳的判断はゲーム内の役割に依存(実験1)
平等と公平に対する参加者の見解は数分で変化(実験2)
不平等な分配には正当化が必要(実験3)

私たちは不平等な振る舞いをしている人を見ると、ついその時の行動が個人の性格であるかのように考え、その人は自分とは違う道徳観を持つ人だと判断してしまいます。


私たちの道徳観はどのような要因によって決まるのでしょうか?また、道徳観は個人の性格に固定されたもので、変化しないのでしょうか?


今回は徳観が自己利益に基づいていることを示した2014年の研究から、心理学の実験がどのような手続きを含んでいるのかも踏まえて考えてみましょう。


この研究は3つの実験から成り立つものですので、まずは3つの実験を概観してみましょう。


実験1

実験1では、平等と公平の価値の間の葛藤を探ることを目的としており、経済ゲームの中でプレイヤーが平等な分配(50%/50%)と公平な分配(75%/25%)の間でどのように選択するか、そしてそれらの分配を正しい(fairとmoral)と考えるのかを調査しています。

全体に共通することですが、このゲームはあるプレイヤーが別のプレイヤーにどのくらいの金額を移すか決定する「独裁者ゲーム」に似ており、参加者は、テキストの書き写し作業によりお金を稼ぎます。一人のプレイヤー(タイピスト)は3段落を、もう一人のプレイヤー(チェッカー)は同じ3段落のうちの1段落を書き写し、正確性を確認するために、チェッカーの段落はタイピストの作業をチェックするのに使われますが、タイピストはどの段落がチェックされるか知りません。チェッカーの段落がタイピストのものと一致すると、両プレイヤーは合計で$2のボーナスを得ることができますが、タイピストはこの収益を等しく分けるか(平等:タイピスト50%、チェッカー50%)、それとも各自の貢献度に応じて分けるか(公平:タイピスト75%、チェッカー25%)決定します。


結果を見てみましょう。

まず、81%のタイピストが平等な分配よりも公平な分配を選択しました(参加者が多くのお金を稼ぎたいと考えていれば、この結果は不思議ではありません)。面白いのは、タイピストは公平な分配をチェッカーよりもフェアで道徳的であると評価したのに対し、チェッカーはタイピストよりも平等な分配をフェアで道徳的だと評価したということです。つまり、参加者の道徳ルールは戦略的に異なっていたというわけです。


実験2

実験1では参加者の役割(タイピストかチェッカーか)に応じて道徳的な判断が異なることが分かりましたが、参加者が自分の役割を知る前と後で判断が変化するのかはわからないので、実験2ではその点について検討が行われました。

手順と刺激は実験1と同じでしたが、参加者は自分がタイピストかチェッカーかの役割を知る前後で、それぞれの分配に対するフェアと道徳の判断を行いました。


結果を見てみましょう。

72%のタイピストが平等な分配よりも公平な分配を選択しました。前/後・タイピスト/チェッカー・フェア/道徳的かについてt検定を行った結果、8つのケース中7つで有意な変化が見られました(例外はチェッカーの公平な分配に対するフェアの判断)。有意な変化は全て、参加者が戦略的に道徳判断を変化させることを示していました。具体的には、役割が明らかになった後、タイピストは公平な分配をよりフェアかつ道徳的と見なし、平等な分配をよりフェアでないかつ不道徳と見なすようになりました。反対に、チェッカーは公平な分配をより不道徳と見なすようになり、平等な分配をよりフェアかつ道徳的と見なすようになりました。


実験3

実験3は、道徳的判断が純粋に自己利益に基づくものなのか、それとも自己利益に基づく判断の為には最もらしい正当化が必要なのかを検証しています。実験2との唯一の違いは、タイピストもチェッカーも共に1段落だけを書き写すという点でした(結果的に、公平な分配と平等な分配ではなく、不平等な分配と平等な分配というルールに変更されたということ)。


結果を見てみましょう。

まず面白いのは、実験1と2ではそれぞれ81%と72%のタイピストが平等な分配ではなく、公平な分配を選択したにも関わらず、実験3では22%のタイピストしか平等な分配よりも自己利益に基づく不平等な分配を選択しなかったということです。タイピストは役割を知った後と作業を完了した後での判断に有意な変化がなかったので、道徳的判断が純粋に自己利益に基づくものではなく、自己利益に基づく判断の為には最もらしい正当化が必要であることを示しています。


振り返ってみると、人々の道徳的判断はゲーム内の役割に依存し(実験1)、平等と公平に対する参加者の見解は数分で変化し(実験2)、不平等な分配には正当化が必要(実験3)であることがわかったわけです。


参考文献:


DeScioli, P., Massenkoff, M., Shaw, A., Petersen, M. B., & Kurzban, R. (2014). Equity or equality? Moral judgments follow the money. Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences, 281(1797), 20142112.

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