加齢による主観的幸福感の変化と異文化比較
ハザ族とポーランド人の主観的幸福感を比較した2020年の研究
ハザ族はポーランド人よりも幸福感が高かった
ポーランドでは加齢に伴い幸福感が低下したが、ハザ族ではそのような傾向は見られなかった
また、ポーランド以外の12ヵ国(ロシア、マレーシア、トルコ、イタリア、スロバキア、フィリピン、チリ、香港、スペイン、オーストリア、アメリカ、メキシコ)から得られたデータと比較しても、ハザ族よりも幸福感が高い国はなかった
国家は国民の幸福度を高める為に経済的な安定性を高めたり、教育機関を整えたり、医療制度を作ったり、社会福祉政策に多額の資金を投じたりと様々な手段を講じます。
反対に、我々国民は人生の多くの時間を労働に捧げ、税金を納め、社会の中の一員として活動します。
なぜこのような複雑な仕組みの中で私たちが生きているのか?と言えば、「幸せに生きる為」と答えることもあるでしょう。
確かに、働いたお金で食べ物を買うことができれば、それは幸せでしょうし、病気になっても治してもらえる可能性があるということは幸せかもしれません。
心理学以外の学問だと、「国が豊かになると国民も幸福になる」とか「よい政治が行われると国民も幸福になる」ということは(当然の)前提だとして、どのようにすれば国は豊かになるのか?とかどのような政治がよい政治か?というような議論が行われるかもしれませんが、心理学はひとまずこのような前提がそもそも正しいのかということを考えたりします。
ハザ族とポーランド人の主観的幸福感を比較した2020年の研究を今回は取り上げますが、まずはハザ族とポーランド人、どっちの方が幸せなのか予想してみましょう。
冒頭の話をそのまま反映させると、狩猟採集民のハザ族よりもポーランド人の方が主観的幸福感は高いと思うかもしれません。
しかし、実際にはハザ族はポーランド人よりも幸福感が高かったということがこの研究ではわかりました。
面白いことは、ポーランドでは加齢に伴い幸福感が低下したが、ハザ族ではそのような傾向は見られなかったということです。
歳を取ることが嫌で嫌でしょうがない。そんなことを考えるのは現代的な生活を送っている人々だけなのかもしれません(もちろん、他の国や他の狩猟採集民なども調査してみなければ実際のところは分かりませんが...)。
また、もう一点非常に興味深いのは、ポーランド以外の12ヵ国(ロシア、マレーシア、トルコ、イタリア、スロバキア、フィリピン、チリ、香港、スペイン、オーストリア、アメリカ、メキシコ)から得られたデータと比較しても、ハザ族よりも幸福感が高い国はなかったということです。
非常に面白い研究ですが、もちろんこの研究だけで多くのことに結論づけることはできません。
再現性があるかや他の尺度だとどうか、他の分析方法だとどうなるかなど調べないといけないことは多くありますが、「狩猟採集のような文明的でない生活を送る人々の幸福感は低く、現代のような何もかも揃った文化的な生活を送れば人々は幸せになれる」というほど簡単な話ではないようです。
参考文献:
Frackowiak, T., Oleszkiewicz, A., Butovskaya, M., Groyecka, A., Karwowski, M., Kowal, M., & Sorokowski, P. (2020). Subjective happiness among Polish and Hadza people. Frontiers in Psychology, 11, 1173.
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