調整を行うか行わないか
2010年の米国における男女の賃金格差(男性を100%とした時の女性の賃金)を調べた研究
調整を行わずに比較→79.3%
教育や経験などが同じ男女を比較→82.1%
産業や職業などもさらに調整して比較→91.6%
同じグループ内の男女を比較すると賃金格差は少なくなるということ
高校の時のGPA(評定平均)を皆さんは覚えていますか?
以下の2人について考えてみましょう。
・AさんのGPAは3.2
・BさんのGPAは3.4
この時、どちらの方が高いGPAでしょうか?このことから何が言えるでしょうか?
普通に考えると、Aさんの方が“成績が良い”と言えそうですが、ここからが一筋縄でいかないところです。
例えば、先程の情報に学年を追加してみましょう。
・Aさん(高校1年生)のGPAは3.2
・Bさん(中学3年生)のGPAは3.4
こうなると、「異なる学年の2人を比べるなんておかしい」と思う方もいるかもしれません。
では、さらに以下の情報を追加してみましょう。
・Aさん(高校1年生)のGPAは3.2(学校の偏差値は60)
・Bさん(中学3年生)のGPAは3.4(学校の偏差値は65)
こうなってくると、何を持って比較して良いのかわからなくなってしまいます。
ここまでの話で何が言いたいかというと、賃金格差を考える時にも同じことが言えるかもしれないというわけです。
2010年の米国における男女の賃金格差(男性を100%とした時の女性の賃金)を調べた研究によると。調整を行わずに男女の賃金を比較すると、女性の賃金は79.3%でしたが、教育や経験などが同じ男女を比較すると82.1%に上昇し、産業や職業などもさらに調整して比較すると91.6%に上昇しました。
つまり、同じグループに属する男女を比較すると賃金格差は少なくなるということです。
もちろん、様々な変数を調整しても男性の賃金100%に対して女性の賃金が100%に到達しなかったということは、女性の社会進出を考える上で重大な問題かもしれません。
しかし、格差の本質を捉える為には、調整を行わずに男女全てをまとめて比較することは適切とは言えないという可能性を考慮する必要があるということです。
参考文献:
Blau, F. D., & Kahn, L. M. (2017). The gender wage gap: Extent, trends, and explanations. Journal of economic literature, 55(3), 789-865.