オスのトレードオフ
コモダスエンマコオロギのメスは高タンパク質の餌で飼育されると長生きする
一方、オスは高タンパク質の餌で飼育されると低タンパク質の餌で飼育されるよりも早死にする
これは、栄養状態の良いオスが寿命と引き換えにより激しい求愛を行うため
地獄の大王の名前がついた身近な昆虫と言えば、なんのことかわかりますか?
そうです。エンマコオロギです。
その仲間にコモダスエンマコオロギという種がいます。
この昆虫を使った興味深い実験は、「長生きすること」の意味を考えさせられます。
2004年に行われたこの実験では、コモダスエンマコオロギを栄養条件を分けて飼育してみました。
すると、メスは高タンパク質の餌で飼育されると長生きすることがわかりました。
これは想像に難くないでしょう。
栄養状態が良ければ長生きするのは当たり前と思った方も多いでしょう。
一方、オスは高タンパク質の餌で飼育されると低タンパク質の餌で飼育されるよりも早死にすることがわかりました。
なぜでしょうか?
メスと同じように、オスも長生きすると考えるのが普通ではないでしょうか?
実は、オスが栄養状態が良いと早死にするのは、寿命と引き換えにより激しい求愛を行う為でした。
つまり、例え早死にしても、求愛を激しくすることが結果的に残せる子孫の数を多くしているというわけです。
コモダスエンマコオロギのオスたちにとっては、線香花火のように細々と長生きするくらいなら、パッと散る花火のように一瞬で子孫を残した方が良いというわけです。
参考文献:
Hunt, J., Brooks, R., Jennions, M. et al. High-quality male field crickets invest heavily in sexual display but die young. Nature432, 1024–1027 (2004). https://doi.org/10.1038/nature03084