乳児の感情表出と識別能力の性差
乳児による感情表出の識別能力の性差を調べた1985年の研究
女性は男性よりも識別が正確かつ迅速
育児経験の有無はこの性差に影響を与えなかった
進化の中で乳児の世話を行なってきた性別は世話をする上で重要な能力に特化していることを示唆
親子に関する研究は進化心理学でもたくさん行われていますが、今回は母性を感じさせるような研究を見てみましょう。
1985年に行われたこの研究ではプライマリー・ケアテイカー仮説という仮説が検証されました。
プライマリー・ケアテイカー仮説とは進化の中で乳児を世話を行なってきた性別が子育てに必要な能力を特化させているであろうという仮説です。
この研究では乳児の感情表出の識別能力の性差を調べた結果、女性は男性よりも乳児の感情表出の識別が正確かつ迅速であることが判明しました。
また、育児経験の有無はこの性差に影響を与えませんでした。
この研究はどのように進化心理学が仮説検証を行っているのか理解するのに良いでしょう。
確かめたい仮説がある時にはそれを検証可能な方法で調査や実験を行うわけです。
もちろん、今回のように進化心理学的な観点から提唱される仮説はあくまでも1つの仮説ですので、「女性の方が男性よりも乳児の感情表出の識別が正確かつ迅速である」という結果や「育児経験の有無が性差に影響を及ぼさなかった」という結果が他のより優れた仮説で説明できるのであれば、その仮説が採用されていくわけです。
参考文献:
Babchuk, W. A., Hames, R. B., & Thompson, R. A. (1985). Sex differences in the recognition of infant facial expressions of emotion: The primary caretaker hypothesis. Ethology and Sociobiology, 6(2), 89-101.
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