存在脅威管理理論からわかる自尊心の適応的機能
ヒトは死の恐怖を和らげる為に自尊心を求める
排斥されたくないヒトではソシオメーター仮説による自尊心の適応的機能が解説されました。
しかし、自尊心の適応的機能については他の説も提唱されています。
存在脅威管理理論では、ヒトが自尊心を保とうとするのは、それが死の恐怖を和らげるからと説明しています。
ヒトは進化の過程で「将来の死」を想像できるくらいに脳がとても大きくなりました。
「死の恐怖」はとても恐ろしいものです。
「死の恐怖」に対処できるのは文化的世界観です。
文化的世界観とは、集団の中で共有されている世界の成り立ちについての信念です。
文化的世界観は不死概念を与えてくれます。
不死概念とは、自分の存在が死後も残り続けるという概念です。
その中で、直接的不死とは天国などで自分という存在が生き続けることを意味し、象徴的不死とは自分の作品や業績などが後世に残っていくということを意味します。
ここで大切なのは、不死概念(直接的不死 or 象徴的不死に関係なく)に適合する為には、文化の価値基準を満たさなくてはなりません。
天国へ行ける基準は文化(宗教)によって異なりますし、どの作品(楽曲など)がより優れていると判断されるかはそれぞれの文化の基準によります。
そこで登場するのが自尊心です。
自尊心は自分が文化の価値基準と合っているかを教えてくれます。
自尊心が低い状態とはすなわち、自分が文化の価値基準に合致していない状態であり、自尊心が高い状態とは自分が文化の価値基準に合致している状態ということです。
自尊心が高い人(ある文化では大金持ちの人)が他の文化へ飛び込めば、(狩りの能力が評価され、通貨が意味を持たないような場合)自尊心は低下するでしょう。
ある研究では、自尊心を高めると死に関連するビデオを視聴した後でも不安が減少することが確認されました。
また、他の研究では文化的世界観が脅かされていると、死関連思考が思い浮かびやすくなるということもわかっています。
参考文献;
Greenberg J., Pyszczynski T., Solomon S. (1986) The Causes and Consequences of a Need for Self-Esteem: A Terror Management Theory. In: Baumeister R.F. (eds) Public Self and Private Self. Springer Series in Social Psychology. Springer, New York, NY
Solomon, S., Greenberg, J., & Pyszczynski, T. (1991). Terror management theory of self-esteem. In C. R. Snyder & D. R. Forsyth (Eds.),Pergamon general psychology series, Vol. 162. Handbook of social and clinical psychology: The health perspective(p. 21–40). Pergamon Press.
Greenberg, J., Solomon, S., Pyszczynski, T., Rosenblatt, A., Burling, J., Lyon, D., Simon, L., & Pinel, E. (1992). Why do people need self-esteem? Converging evidence that self-esteem serves an anxiety-buffering function.Journal of Personality and Social Psychology, 63(6), 913–922.https://doi.org/10.1037/0022-3514.63.6.913
Schimel, J., Hayes, J., Williams, T., & Jahrig, J. (2007). Is death really the worm at the core? Converging evidence that worldview threat increases death-thought accessibility.Journal of Personality and Social Psychology, 92(5), 789–803.https://doi.org/10.1037/0022-3514.92.5.789
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