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財布を返したくない

所得格差と財布を返す意図


40ヵ国355都市で行われたデータ(Cohn et al., 2019)を再分析すると所得格差が大きい国の市民ほど拾った財布を返す可能性が低いことが判明
その後行われた実験から、所得格差が大きいと「拾った財布を返したい」という意欲を減らすことが確かめられた

財布が戻ってくるには?では40ヵ国355都市で落とした財布が帰ってくるのかを調査しました。


結果としては、財布に多くのお金が入っているほど帰ってくる可能性が高いというものでした。


2021年の研究では、先程のデータを再分析し、「所得格差が大きい国の市民ほど拾った財布を返す可能性が低い」ことを明らかにしました。


その後行われた実験から、所得格差は「拾った財布を返したい」という個人的な欲求を減らすことが確かめられたので、この一連の研究は単なる相関を明らかにしたものではないというわけです。


所得格差ということを深く考えてみると、なぜこのような結果になるのかがわかるでしょう。


所得格差が低い国(人々がリスクを取っても利益が他者と比べてそれほど増えるわけではない国)ではわざわざ財布を盗むというリスクを取らないでしょう。


しかし、所得格差が大きな国では、他者との競争で有利に立つ為にリスクを取るメリットがあります。


財布が帰ってくる可能性が高い国を単に“優しい国”とするのは分析としては不十分ということがわかる研究です。


参考文献:


Cohn, A., Maréchal, M. A., Tannenbaum, D., & Zünd, C. L. (2019). Civic honesty around the globe. Science, 365(6448), 70-73. doi:10.1126/science.aau8712


Du, H., Chen, A., Chi, P., & King, R. B. (2021). Income Inequality Reduces Civic Honesty. Social Psychological and Personality Science, 12(4), 537–543. https://doi.org/10.1177/1948550620929495

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